PD-L1に匹敵、CD47を超えるがん免疫療法の新たなターゲットーCD24

がん細胞は、「食べないで」シグナルを発信することで、免疫細胞に殺されたり、貪食したりすることを避けることが知られております。

CD47

CD47は、人の体内にあるCD47遺伝子がコードする膜貫通型タンパク質で、免疫グロブリンスーパーファミリーに属しています。1980年代以降、CD47は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、膀胱がんや脳腫瘍などの一部の固形腫瘍など、様々な腫瘍で高発現していることが分かってきました。

2009年、スタンフォード大学医学部の有名ながん幹細胞専門家であるアーヴィング・ワイズマン教授は、CD47とマクロファージのSIRPαの相互作用で、「食べないで」シグナルを放出し、腫瘍細胞がマクロファージに貪食されるのを防ぐことを示す論文をCell誌に発表しました。

2014年、アーヴィング・ワイズマン教授のチームは、CD47に対する抗体を開発し、初の臨床試験を開始し、白血病や非ホジキンリンパ腫などの血液がんで良好な結果が得られるCD47ターゲットの臨床開発に注力するため、Forty Seven 社を設立しました。

CD24

CD24は、熱安定性抗原としても知られており、ホスファチジルイノシトール連鎖型の細胞表面糖タンパク質であり、腫瘍関連マクロファージが発現する受容体Siglec-10との相互作用で、感染症、敗血症、肝損傷、慢性移植片対宿主病に対するダメージを受ける炎症反応を抑制することが以前から知られています。

しかし、様々な固形腫瘍でCD24が過剰発現していることも示されているので、がん細胞はCD24の発現を利用して、Siglec-10を発現するマクロファージにクリアされないようにしているのではないですか?

2019年7月、アーヴィング・ワイズマン教授は「Nature」誌に「CD24 signalling through macrophage Siglec-10 is a target for cancer immunotherapy」と題した研究論文を発表しました。CD24ががん細胞によって発現するもう一つの「食べないで」シグナル伝達タンパク質であることを示しました。

CD24は、がん細胞が自己防衛のために利用するマクロファージ表面のSiglec-10と結合することで、SHP-1/SHP-2媒介の阻害シグナル伝達経路を活性化し、がん免疫療法の開発のための非常に有望なターゲットとなっています。

記者 尾尻和紀 報道

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