2つの遺伝的欠陥を組み合わせることはがんをターゲットにした新たなアプローチ

記者 尾尻和紀 報道

ゲノム配列解析の進歩に伴い、がん治療では、がん細胞の生存に重要な標的を特定するために、がん特有の遺伝的欠陥を利用した「合成致死」という考え方を利用しようとする動きが活発化しています。

異なる遺伝子の非致死的変異が細胞内で結合して致死的になると、合成殺傷につながります。

2020年7月27日、米国科学アカデミー紀要(PNAS)のオンライン版に掲載された新しい論文の中で、Ludwig Institute for Cancer Research San Diegoとカリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者は、主要な酵素の阻害が、乳がんと卵巣がんの2つの主要なタイプに関連するヒトのがん細胞の死につながり、マウス研究では腫瘍の増殖が減少したことを報告しています。

上級研究の著者であるRichard D. Kolodner博士、医学・細胞・分子医学の特別教授、サンディエゴのルートヴィヒがん研究所のメンバーのチームは、合成致死関係を見つけるため、Saccharomyces cerevisiaeという基礎研究で使用される酵母の一種であることを研究しました。

研究チームは、DNAの複製と修復に関与するDNA構造特異的核酸エンドヌクレアーゼであるフラップエンドヌクレアーゼ1(FEN1)に着目した。彼らはがん細胞に着目し、低分子阻害剤や遺伝子アブレーションを用いてFEN1の機能を阻害すると、BRCA1とBRCA2の変異がん細胞株が優先的に死滅することを発見しました。驚くべきことに、正常細胞はFEN1の阻害から回復することができました。

BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子は通常、乳がんや卵巣がんなどのがんを予防する働きをしていますが、変異すると乳がんや卵巣がんになりやすくなったり、若くしてがんになりやすくなったりすることがあります。

乳がんと診断された女性の10%未満がBRCA変異を持っていますが、BRCA1変異を持つ女性の55~65%が70歳までに乳がんを発症し、BRCA2変異を持つ女性の約45%が乳がんを発症すると推定されています。

同様に、BRCA変異のある女性は卵巣がんのリスクが高く、BRCA変異のある男性は乳がんや前立腺がんのリスクが高くなります。

国立がん研究所によると、乳がんは米国で最も多いがんの一種で、毎年約27万60000人が新たに発症しているという。

前立腺がんは4番目に多いがんで、新規症例数は191,930件、卵巣がんは17位で、年間の新規症例数は推定21,750件となっています(国立がん研究所調べ)。その後、Kolodner氏らは、免疫不全マウスの異種移植モデルでこのアプローチを試験したところ、FEN1の阻害により腫瘍の増殖が有意に抑制されることを見出しました。

研究者らは、今回の発見は、合成致死関係を発見するための遺伝子ツールとしてSaccharomyces cerevisiaeを使用することの価値を強調していることと、FEN1阻害剤が標的とする脆弱性を持つ特定の癌を治療するためにさらに開発される可能性のある治療薬であることを明らかにしているという2つの点で意義深いものであると述べています。

記者 尾尻和紀 報道

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